第364章

「ちょっと、何するんですか。鈴木や古村に見られたらどうするの」

 我に返った安藤絵美は、少し恨めしげな視線で原田桐也を睨んだ。

 原田桐也は口元を緩めて笑う。

「平気だ。彼らは気づかないさ」

 後方の座席にいる鈴木雲と古村苗は言葉こそ交わしておらず、互いに自分の世界に入り込んでいるように見える。だが、その内心が決して穏やかではないことは明白だった。意識のベクトルは確実に互いへと向いており、前の席にいる原田桐也や安藤絵美のことなど、目に入っているはずもなかった。

 安藤絵美は振り返り、そんな二人の様子を窺った。

 古村苗は窓の外に顔を向け、まるでそこに広がる雲がこの世で最も美しいも...

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