第389章

「古村苗!」

 鈴木雲は古村苗を抱きしめ、その双眸を赤く染めて絶叫した。

 男は鈴木雲を刺し損ねたことに気づくと、眼底にどす黒い殺気を宿し、再び凶器を振り上げる。

 その時だ。

 給仕係に騙されて甲板へ誘い出されていた安藤絵美が、その光景を目撃した。心臓が早鐘を打つ。彼女はタラップを駆け抜けると、鈴木雲を殺そうとしていた男の脇腹めがけて、渾身の蹴りを叩き込んだ。

「ぐあっ……!」

 男の手からナイフが滑り落ち、カランと乾いた音を立てる。男は甲板に激しく叩きつけられ、鮮血を吐き出したまま、すぐには立ち上がれそうになかった。

 だが、もう一人の男の姿がどこにもない。

 安藤絵美に...

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