第56章

原田桐也の声色には、かすかな愛おしさが滲んでいた。それは安藤絵美が予想していなかったことだった。

哲也ちゃんと達也ちゃんと一緒に過ごした午後のたった数時間で、原田桐也はもうこの二人の息子をこんなにも気に入ってしまったのだ。

安藤絵美は食事をしながら、哲也ちゃんと達也ちゃんに根気強く話しかける原田桐也の姿を眺めていた。なぜだか、彼女は原田桐也と二人の息子が少し似ているように感じた。

おそらくそれが、原田桐也が哲也ちゃんと達也ちゃんを気に入った理由なのだろう。

「ママ、あのおじさん、いい人だと思う。ママの彼氏として考えてみたら?」

食事を終え、安藤絵美と古村苗が双子を連れて家に帰ると、...

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