第64章

「あなた、どうしたの?」

一階に下りてきた山本芳は、ソファで携帯電話を握りしめ、怒りを露わにしている安藤丘の姿を目にした。

「さっき安藤絵美から電話があった。早坂の奥さんがT市に来ていて、しかも彼女に接触したらしい。早坂青との婚約関係を復活させるようにとな」

山本芳は一瞬呆気にとられたが、すぐに我に返ると興奮して声を荒らげた。「どうしてよ? 早坂青はうちの羽言と付き合ってるじゃない。長年付き合ってきたのに、どうして急に手のひらを返せるわけ?」

安藤丘が口を開く前に、階段を下りてきた安藤羽言がその会話を耳にした。

彼女の声は母親以上にヒステリックだった。「早坂青の野郎、ふざけないでよ...

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