第70章

安藤絵美は、身体を半分に折り畳むかのように深々と頭を下げる原田真を見つめ、胸中で感慨に耽っていた。

原田桐也の存在がなければ、真がこれほど丁重に謝罪することなどあり得なかっただろう。

母が遺した通帳を手にし、死の間際まで自分を案じていた母の心情を思うと、胸が締め付けられるように痛む。真の過去の過ちを追及する気力など、今の絵美には残っていなかった。

「叔母さん、頭を上げてください。……聞きたいことがあります。母が生前、誰かと対立していたことは? 亡くなる直前に何か奇妙な出来事はなかったでしょうか。あるいは、あなたに連絡を取ってきた時、母の様子におかしな点は?」

絵美はもう、母の死が単な...

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