第80章

安藤絵美は少し頭を抱えていた。

原田桐也と付き合っているとはいえ、それはすぐに彼と結婚するという意味ではないのだから。

彼女が反論しようと口を開きかけたその時、突然スマホが鳴り響いた。

「絶対おじさんからだ! ママ早く出て、僕おじさんと話す!」

電話の着信音を聞きつけた達也ちゃんは、興奮した声で安藤絵美に電話に出るようせがむ。

下の息子にじっと見つめられ、安藤絵美は部屋を移動して電話に出ることもできず、仕方なくスピーカーボタンを押した。

「桐也様、達也ちゃんがお話ししたいそうです」

原田桐也が甘い愛の言葉を口走らないよう、安藤絵美はスピーカーに切り替えると同時に、先手を打って釘...

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