第85章

「なんてこと！　これ、世界的に有名なメディア企業のオーナーの連絡先じゃないですか。夕景先生、まさか彼と知り合いなんですか？」

名刺に記された名前を見て、南は驚きのあまり目玉が飛び出さんばかりの表情を浮かべた。

さきほど安藤絵美が、藤原謙を高級ブランドのアンバサダーに推薦すると言っていたことを思い出し、彼女は即座に歓喜の声を上げた。

「謙、今回は災難だったけど、無駄じゃなかったわね。多くの人が喉から手が出るほど欲しがっても手に入らない、下手をすれば金を積んでも相手にされないような高級ブランドの仕事を、こんなにあっさり手に入れちゃうなんて。これであんたの価値も倍増よ。私たち、本当に大儲けだ...