第94章

「みんなも匂うでしょ? やっぱりドアを開けて換気したほうがいいって。エアコンもつけてさ。こんなきつい香水の匂いを嗅ぎながら海鮮を食べるなんて、ちょっと無理。気持ち悪くなっちゃう」

小林鈴の言葉は少し大袈裟だった。確かに山田静は香水を多めにつけていたが、他人が反感を抱くほどではない。ただ、原田桐也がその匂いを嫌っているだけだ。

実際、原田桐也以外、テーブルの男性陣は誰も嫌な顔をしていない。

ただ小林鈴がそう口火を切ったことで、周囲には面白がるような空気が漂った。特に女性陣は、山田静がなぜそんな香水をつけているか、その目的をよく分かっていたからだ。

山田静は顔色が優れない。原田桐...

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