第10章

美咲は携帯のメッセージを見て口を尖らせた。あの男は一晩中抱きしめて寝ておきながら、逆に自分のことを嫌がるなんて。

「どうしたの、美咲?何か見たの?なんだか元気なさそうだけど」

田中遥が近づいてきて、携帯の画面を覗き込もうとした。

美咲は素早く携帯をしまい、首を振った。

「なんでもないよ。迷惑メールだけ。そういえば、一時間目は美術だよね」

田中遥は見事に話題を変えられ、頷きながら答えた。

「そうそう、一時間目は美術。今日は人物像を描くんだって」

美咲と田中遥は美術室に着いた。他の生徒たちは既に揃っており、先生の到着を待つばかりだった。

美咲が絵の具を整えていると、先生が入ってき...

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