第27章

小林美咲は手に持った高橋信二の携帯電話を見つめ、浴室から出てきた高橋信二を見た。彼女は慌てて説明した。

「あなたの携帯が鳴ったの。大事な連絡かもしれないから、先に出てしまったわ。浴室から出てきたら教えようと思って」

「誰からだ?」

高橋信二は小林美咲を見つめた。彼の目には私物に触れられた怒りはなく、ただ少しの好奇心だけがあった。

「あなたの専属秘書よ。ホテルで待ってるって」

小林美咲は言い終わると、注意深く高橋信二の表情を観察した。

不思議なことに、高橋信二の顔には何の表情も浮かんでいなかった。

「わかった」

高橋信二はただ軽く頷き、タオルで髪を拭き続けた。

小林美咲は高橋...

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