第3章
一晩中雪が降り続けた後の翌日は、きっといつもより寒くなるものだ。
朝、ベッドから起きて学校に行く小林美咲は、何年も着続けた一枚の綿入れコートしか着ていなかった。
山田さんは小林美咲に、高橋信二に頭を下げてみたらどうかと勧めたい気持ちがあった。そうすれば少なくとも新品のダウンジャケットがもらえて、この冬を快適に過ごせるだろう。だが彼女は小林美咲の性格を思い出し、黙ってしまった。
小林美咲は山田さんに別れを告げると、自転車に乗って高橋家の別荘を後にした。
夜には大雪が降ったため、雪の上を自転車で走るのはとても難しかった。
小林美咲は数分間こいだ後、疲れを感じて自転車から降り、押しながら学校へ向かって歩き始めた。
道中、小林美咲は見覚えのある黒いロールスロイスを見かけた。
それは高橋信二専用の車で、小林美咲はもちろん知っていた。
ただ、小林美咲には高橋信二がなぜあんなにゆっくりと車を走らせているのか理解できなかった。彼女が自転車を押す速度とほとんど変わらないほどだった。
「雪道で運転するのが危険だと思っているのかしら?でも運転手の田中さんは何年も運転してきたベテランなのに、こんなにゆっくり走るなんておかしいわ」
小林美咲には理解できず、考えるのをやめた。彼女はもうその車を見ることなく、自転車を押して先に進み続けた。
運転手の田中明はバックミラーに映る高橋信二の冷ややかな表情を見て、慎重に尋ねた。
「若旦那、本当にお嬢様を乗せなくてもよろしいのですか?」
高橋信二は眉をひそめ、少しいらだたしげに言った。
「ほっておけ」
運転手の田中明は小さくため息をつき、心の中でつぶやいた。
「こんなにゆっくり車を走らせろって言うのは、お嬢様に自分から乗ってきてほしいからじゃないのか?相手が乗ってこないなら、自分から一言声をかければいいのに。二人とも頑固だな」
突然、後ろの高橋信二が言葉を発し、田中明はびっくりした。
「後で人を手配して、家から学校までのこの道の雪を全部取り除かせろ」
高橋信二が言った。
田中明はうなずき、心の中でほっとした。
「びっくりした。俺の本音が聞こえたのかと思った」
小林美咲は自転車を押しながら、なんとか授業のベルが鳴る前に教室に入ることができた。
親友の田中遥は小林美咲に、先生が買うように言った絵の具を買えたかどうか尋ねた。
小林美咲は首を振った。一番安い絵の具でさえ、今の彼女には手が届かなかった。
しかし負けず嫌いな性格の彼女は人の助けを受け入れたくなく、ただじっくりとお金を貯めるしかなかった。
「美咲のお兄さんって一体何の仕事をしてるの?なんだか美咲より貧乏そうね」
田中遥は思わず愚痴をこぼした。
小林美咲の家庭状況について、田中遥はある程度知っていた。父親は他界し、母親は行方不明で、ずっとお兄さんが彼女の面倒を見てきたという。しかしそのお兄さんについて小林美咲はめったに話さず、田中遥でさえ彼が何をしているのか知らなかった。
突然、田中遥の背後から手が伸び、小林美咲の額に触れた。そして明るくハンサムな男子学生が小林美咲の視界に入ってきた。
「額が冷たいね。今日、君が自転車を押して歩いてくるのを見たよ。気をつけて、風邪ひかないでね」男子学生は自分のマフラーを小林美咲の首に巻き、温かい笑顔を見せた。
その男子学生は佐藤健といい、小林美咲と田中遥の親友だった。
恵まれた家柄、端正な容姿、そして人当たりの良い性格で、学校ではとても人気があった。
小林美咲自身も時々、佐藤健が本当に自分の兄だったらどんなにいいだろうと思うことがあった。
佐藤健を好きな人がいれば、当然彼を嫌う人もいた。
例えば、今ドアのところに立っている高橋信二のように。
高橋信二は小林美咲が佐藤健に笑顔を向けている様子を見て、心の中に怒りが湧き上がった。小林美咲は彼に対して一度も笑顔を見せたことがなかったのだから。























































