第7章

佐藤健のことについて、美咲は心の中で謝罪するしかできなかった。

佐藤家に多少の影響力があったとしても、高橋信二の目には、彼はゴミと同じようなものでしかなかった。

美咲は心の中でため息をつき、プレゼントの箱を開けた。中には綺麗なブレスレットが入っていた。

「わぁ、ブレスレットじゃない!男の子が女の子にブレスレットをプレゼントするって、どういう意味か知ってる?」

遥が近寄ってきて、美咲に向かって眉をひそめた。

「どういう意味なの?」

美咲はそのブレスレットを腕に付けた。白い腕とブレスレットがとても良く似合っていた。

遥は美咲の耳元に近づき、からかうように言った。

「永遠に手を繋いでいたいっていう意味よ」

遥の言葉に美咲の顔が真っ赤になり、慌ててブレスレットを外し、箱に戻した。

「これ、健に返してあげて。高価すぎて受け取れないわ」

美咲は確かに佐藤健のことが好きだったが、佐藤家に迷惑をかけたくなかった。

「お願い、美咲。健はあなたのことが好きなのは誰の目にも明らかじゃない。何を遠慮してるの?」

遥は大げさな表情を浮かべ、何か衝撃的なことを聞いたかのようだった。

美咲は答えに困り、言い訳のように言った。

「兄さんが私たちの関係を認めてくれないの。だから、返してあげて」

遥は腰に手を当てて怒った。

「ハンドバッグ一つ買ってくれないくせに、奴はどんな面でお前のことを決められるの?早く呼び出して、私が説教してやるわ!」

美咲は慌てて遥の口を押さえ、周りを見回した。誰かが盗み見していないか確認したかった。

この学校には信二の目付け役がいることを、美咲は忘れていなかった。遥の声は大きく、もし信二に聞こえたら、きっとひどい目に遭うだろう。

「もう黙って。この話はやめましょう」

美咲は親友を見つめる目に哀願の色を浮かべた。これ以上命知らずな真似をしないでほしかった。

遥はため息をつき、美咲の肩を叩きながら小声で言った。

「わかったわ。最後に一つだけ。健が言付けてたの。あなたのことが好きで、帰国したら結婚したいって」

美咲はその場で固まり、白い頬が一瞬でピンク色に染まった。

放課後、美咲は楽しそうに自転車を漕いで高橋家の別荘へと向かった。道中、鼻歌を歌い、とても上機嫌な様子だった。

しかし突然、見覚えのある車が前に止まり、窓が開くと、美咲の笑顔は消え失せた。嫌な奴、高橋信二が現れたからだ。

「海外出張じゃなかったの?」

美咲は思ったことをそのまま口にした。

車の中の信二の表情が険しくなり、美咲を見つめながら言った。

「俺がいないと、そんなに楽しいのか?」

美咲は本当は頷きたかったが、目の前の男が不機嫌になることは分かっていたので、首を振った。

信二は冷笑し、車のドアを開けた。その意図は明白で、美咲に乗れと言っているのだ。

美咲は断りたかったが、信二の表情が二つ目の選択肢はないことを物語っていた。

美咲は仕方なく自転車をトランクに積み、車に乗り込んだ。

道中、信二は終始黙ったままで、美咲も同じように車の反対側に寄って座り、信二との接触を避けようとした。

別荘に着く直前になって、信二が突然言い放った。

「今夜、俺の部屋に来い。遅れるな。俺が何時に寝るか知りたければ、山田に聞け」

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