第690話こんなに怖いとは思わなかった

ウィノナは、固く結ばれたザカリーの唇に目をやった。彼は頭上のジェットコースターのレールを見上げている。

彼女のいる角度からは彼の表情がよく見えないが、握られた手に力がこもっていくのが感じられた。「怖いの?」

ザカリーは答えた。「いや」

ウィノナはつま先立ちになり、彼の顔をよく見ようと首を伸ばした。「本当に?」

あまりに即答だったので、何かを隠しているように思えた。

そんな風に身を乗り出すと、ウィノナは転んでしまいそうだった。ザカリーは彼女の腰に腕を回し、優しく自分の方へ引き寄せた。「本当だよ」

前のグループがジェットコースターから降りてきて、列が前に進み始めた。ザカリーはウィノナを...

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