第161話ぼくの瞳の少年

アレクサンダー視点

エドワードが俺のオフィスの戸口に、彫像のように突っ立っていた。六十を過ぎても、相変わらず板のように硬直している。

「旦那様、空港へ向かうお車の準備が整いました。お荷物もすべて」

俺は頷き、視線はノートパソコンに釘付けのまま、モスクワのチームに最後の一通となるメールを送信した。「五分くれ」

「失礼ながら、旦那様……」エドワードがためらった。普段の彼らしくない。俺の執事はいつも氷のように冷静で、何事にも動じない男だ。「今回の出張、本当に大丈夫でいらっしゃいますか? その……例の発作の件で、皆が神経を尖らせておりまして」

俺はついに顔を上げた。彼の目に浮かぶ、紛れもない心...

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