第167話トレイナーがいつも嫌い

ノーラ視点

「じっとしてなさい、このくねくね坊や」と、私は囁いた。外科医のような精密さで、エイデンのぷっくりした左頬に白いメイクを叩き込んでいく。キングスレイ・ミュージックホールの舞台裏にある楽屋は、コンテスト前の独特の熱気に満ちていたけれど、私たちの小さな一角だけは、私のブラシが肌を撫でる柔らかな音と、息子の楽しそうな笑い声だけの小さな世界になっていた。

エイデンは椅子の上でもじもじと身じろぎした。まるで埋蔵金でも見つけたみたいに、大きな瞳がきらきらと輝いている。「もうできた、ママ?僕、スーパーヒーローみたい?」そう言ってぴょんと跳ね、私の手からブラシを落としそうになる――四歳児特有の、...

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