第199章:蒸し風呂サレンダー

ノーラ視点

酒は本音を語らせるというけれど、ウイスキーは別格――もっと厄介な代物だ。特にそれが、キングスリー・シティきっての悪名高き億万長者、アレクサンダー・クラフリンの血中を駆け巡る最高級品となれば。

「ああ……信じらんねえくらいいい匂いがする」

彼が顔から床に突っ込むのを必死で支えていると、アレクサンダーは私の髪に顔を埋めてそう呟いた。そのがっしりとした体は、まるで高級スーツを着た岩塊のように私にもたれかかり、服越しに筋肉の熱が伝わってくる。

私は彼の腰に回した腕に力を込めた。高鳴る自分の鼓動は無視して。

「あなたって、本当に重たい男ね。それに、ひどい酔っ払い。見事なまでに、へべ...

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