第206話連れ去られた女を愛したからかわれた

チャールズ視点

ヘンリー・メイソンの誕生日パーティーは、今シーズン一番の注目イベントだった。ホテルの玄関からレッドカーペットが敷かれ、その両脇には「俺たちがどれだけ金持ちか見ろ」とでも叫んでいるかのような、派手すぎる花や氷の彫刻が並んでいた。車寄せはベントレー、マイバッハ、それにショールームが開けるほどの数のロールスロイスで埋め尽くされている。

俺はいつもの顔ぶれに頷き、中身のないお喋りを交わしながら中へ向かう。その時、彼らが目に入った――そして、俺の世界は傾いた。

艶のある黒のベントレーが静かに縁石に寄せられる。運転手が慌ててドアを開けると、忌々しいことにアレクサンダー・クラフリンが降...

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