第71話女性が握るおもちゃ

ジェイソン視点

俺は、カテゴリー5のハリケーンさながらに廊下を突き進んでいくノラの姿を見ていた。彼女の顔は怒りで紅潮している。まったく、あの二人はとんでもない。顔を合わせるたびに、まるで火のついた導火線のついた火薬樽を見ているような気分になる。

『なるほど、それで合点がいった』

俺はため息をつき、肩を回してからアレクサンダーの執務室のドアを押し開けた。当の本人は床から天井まである窓のそばに立ち、こちらに背を向けている。街のスカイラインを背景に、そのシルエットが鋭く浮かび上がっていた。だが、すぐに俺の目を引いたのは、彼の右手に巻かれた白い包帯だった。

「なんてこった、アレックス」俺は思わ...

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