第16話

病院の手術室の前。点きっぱなしだった赤いランプが、ようやく消えた。

重い扉がゆっくり開き、濃い消毒液の匂いがふわりと押し寄せる。

晴香が、看護師にストレッチャーで運び出されてきた。

酸素マスクをつけ、顔色は紙みたいに白い。麻酔がまだ抜けきっていないのか、瞼は固く閉じたまま。生気がない。

「ご家族の方は? 晴香さんのご家族、いらっしゃいますか」

執刀医がマスクを外し、カルテを手にして声を張った。

廊下はがらんとしていて、通りすがりの患者と付き添いが何人か、物珍しそうに視線を向けるだけ。

返事はない。

医師は眉をひそめて周囲を見回す。

看護師の目に、かすかな同情が浮かんだ。

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