第21話

場の空気が、一瞬で凍りついた。

淵は顔を殴り飛ばされた姿勢のまま、何が起きたのか理解できていないようだった。

ゆっくりと首を戻し、痛む頬の内側を舌先で押し上げる。

「俺が甘やかしすぎたせいか。ずいぶんと図に乗るようになったな」

その声は低く、静かな危険を孕んでいた。

「あなただから殴ったのよ! 本当に反吐が出る!」

晴香は激しく胸を上下させ、真っ赤な瞳に底知れぬ憎悪を滾らせていた。

「私がまだ、あなたの言いなりになる馬鹿な女だと思ってるの?」

彼女の決然とした眼差しを受け、淵の胸の奥で、何かが手から滑り落ちていくような焦燥感が強まった。

以前の晴香は彼に何でも従順で、その瞳...

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