第25話

淵は飛んできた唾を避けもせず、顔に受けた。彼がゆっくりと手を上げてそれを拭い去った瞬間、顔から笑みが消え失せた。

「君は僕の婚約者なのに、言うことを聞かない。なら、こうして縛りつけておくしかないじゃないか」

「君が僕を愛しているのは分かってる。ただ少し混乱して、心にもないことを言っているだけだ。責めたりしないよ」

「御託はそれくらいにして」

晴香は冷たく遮り、嫌悪感を露わにして吐き捨てた。

「私があなたを愛してる? どこからそんな自信が湧いてくるの?」

野良猫や野良犬を愛することはあっても、この男を愛することなど二度とない。

淵の顔色が険しくなる。

「そんなはずない。君は僕を...

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