第27話

哲也は社長の陰鬱な顔色を窺い、心の中で溜息をついた。

恐る恐る前に進み出て、声を潜める。

「社長、それは……惚れた弱みというものです」

深也の煙草を挟む指がぴたりと止まったが、目線すら上げない。

哲也は言葉を継ぐ。

「浅倉さんのためなら命すら投げ出せるあなたが、この程度のことで折れるはずがないでしょう。それに、浅倉さんが結婚式で淵に刃向かったのには、きっと何かよほどの事情があるはずです」

「惚れた弱み、だと?」

深也はまるでたちの悪い冗談でも聞いたかのように、口角に嘲笑を浮かべた。

煙草を深く吸い込む。辛みのある煙が肺の奥で渦を巻き、むせて目元がわずかに赤く滲んだ。

「哲也...

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