第29話

淵の胸に苛立ちが爆発した。彼は猛然と手を伸ばし、晴香の顎を力任せに鷲掴みにする。

その握力は尋常ではなく、下顎の骨が砕けそうなほどだった。

晴香はたまらず口を離す。その唇には淵の血がべっとりと付着し、凄惨な有様だった。

「何のつもりだ」

手の甲に刻まれた、骨に届くほど深い歯型を見下ろし、淵の目に陰湿な殺意が閃く。

顎が砕けそうなほどの激痛にもかかわらず、晴香は意地でも顔を背けず、真っ直ぐに上を向いた。

淵を睨み据え、口角に冷たい笑みを刻む。

「四六時中、あんたを殺してやりたいって思ってるわ!」

「淵、あんたの血は本当に臭い。吐き気がする!」

淵の指先に、さらにギリッと力がこ...

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