第31話

「ぐっ!」淵は苦悶の声を漏らし、晴香を掴んでいた手が無意識に緩んだ。

信じられないという目で晴香を睨みつける。その瞳に宿る怒りの炎は、彼女を灰にするほどの勢いだった。

「この恩知らずの女が!」

「今さっき、お前の命を救ってやったばかりだろうが!」

晴香はそんな戯言に耳を貸さない。

手が緩んだその一瞬の隙を突き、彼を力一杯突き飛ばすと、身を翻して礼拝堂の扉へ向かって駆け出した。

身に纏ったウェディングドレスの裾が長くて重く、走る速度を著しく落とす。

「ビリッ!」晴香はためらうことなく、幾重にも重なる白いレースを両手で掴み、力任せに引き裂いた。

途方もない価値を持つ特注のドレスは...

ログインして続きを読む