第36話

廊下は水を打ったように静まり返り、「手術中」の赤いランプだけが毒々しく光を放っていた。

深也は苛立たしげにネクタイを引き緩めると、微かに震える手でポケットから煙草を取り出した。だが、何度ライターを擦っても火は点かない。

「くそっ!」

低く毒づき、ライターを床へ叩きつける。

硬質な音が、空虚な廊下にやけに大きく響き渡った。

深也は再びライターを拾い上げ、ようやく煙草に火を点けた。

深く吸い込む。喉を焼く紫煙が、胸の奥で暴れる殺意を辛うじて押さえ込んでいた。

スマホを取り出し、哲也へ電話をかける。

「哲也、よく聞け」

深也は紫煙を吐き出し、陰惨な目を細めた。

「あの淵って野郎...

ログインして続きを読む