90、

仕事の報告をしに入ろうとしていた哲也は、扉口でその光景を目にした瞬間、慌てて足音を殺しながら後ずさった。気を利かせるように、そっとドアまで閉めて。

書斎の中で、深也はようやく、弄り倒して赤く腫れたその唇を解放した。

額と額を寄せ、鼻先が触れ合う距離。吐息が絡み、熱が混ざる。

「晴香。今のは、お前が言ったんだぞ」

深也の瞳の奥に、濃い欲が渦巻く。

「次に逃げようとしたら、金の檻を作って閉じ込める。どこにも行けないようにして……俺だけ見てろ」

異常な宣言のはずなのに、晴香はこらえきれず笑ってしまった。

自分から身を寄せ、血の滲む口元に、ちゅ、とひとつキスを落とす。

「いいよ。檻の中...

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