第103章

専門医は報告書をひったくり、素早く目を通した。その顔色は、看護師よりもさらに蒼白になっていた。

「二重……」男はうわごとのようにつぶやいた。「二重に巻きついている……くそっ!」

神谷洲の頭は、真っ白になった。

専門用語など分からない。だが、その場にいるすべての医療スタッフが浮かべた、幽霊でも見たかのような驚愕の表情が、事態の深刻さを物語っていた。

「どういう、意味だ」自分の声が、どこか遠くから聞こえた。

専門医が顔を上げる。その目には深い無力感が漂っていた。

「神谷さん。端的に言えば、へその緒は胎児の命綱です。今、その命綱が絞首縄のように、赤ん坊の首に巻きついている。それも、二重...

ログインして続きを読む