第14章
彼はいつからそこに立っていたのだろうか。仕立てのいいスーツに身を包み、髪は一糸乱れず撫でつけられ、この荒れ果てた洗面所とはひどく不釣り合いだった。
青ざめた彼女の顔を見下ろし、わずかに眉をひそめる。
「木村さん」
相沢栞には目もくれず、冷え切った声で外へ向かって呼んだ。
木村さんが小走りで駆けつける。
「旦那さま」
「温水景介に電話して、薬を変えさせろ。一日中あちこちで吐かれては、気分が悪い」
言い捨てて背を向ける。最後まで、相沢栞へ視線を向けることは一度もなかった。
数日後の午後、別荘はひどく静まり返っていた。
相沢栞は二階のバルコニーのデッキチェアに寄りかかり、画集を開...
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