第50章

彼女は神谷洲の前にすがりつき、顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしていた。

「熱性けいれん」という言葉を耳にした瞬間、神谷洲の手からピアスの証拠品袋が滑り落ちた。

床に落ちた証拠品など気にも留めない。頭の中は、神谷蓮の青ざめた小さな顔でいっぱいになっていた。

彼にとって、たった一人の息子なのだ。

遠ざかる神谷洲の背中を見つめながら、吉川秀美の瞳の奥に、計画通りだと言わんばかりの陰湿な光が走った。

彼女は身をかがめ、震える手で床の証拠品袋を拾い上げると、足早に書斎を後にした。

「これを処分して。一刻も早く、何の痕跡も残さないように」

吉川秀美は腹心の使用人にピアスを渡し、声を押し殺して...

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