第52章

夜は深く、病院の廊下には時折、誰かの咳払いが響く。

相沢栞の病室は、生命維持装置が刻む微かな電子音だけが支配していた。

知らせを受けて駆けつけた温水景介は、ベッドで昏睡状態にある相沢栞と、窓辺に立つ神谷洲を交互に見やり、その瞳に複雑な色を浮かべた。

「胃を患っていると知っていながら、なぜ吐血するまで追い詰めた」

温水景介の声には明確な非難が混じっている。

神谷洲は振り返り、氷のように冷たい顔で吐き捨てた。

「自業自得だ」

温水景介は深く息を吸い込んだ。今ここで何を言っても無駄なのは分かっている。歩み寄って相沢栞の容態を確認し、カルテに目を落とすと、その眉間が険しく刻まれた。

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