第54章

彼女は勢いよく手を振り上げ、浅野薇々の腕を弾き飛ばした。

注射器が手からすっぽ抜け、床に落ちて甲高い音を立てる。

「何をするの!」浅野薇々の顔色が変わり、マスクの下の表情が険しく歪む。

相沢栞にまだ抵抗する力が残っているとは思いもよらなかったのだ。

相沢栞はもがきながらベッドから降りようとするが、身体が弱りきっており動きが鈍い。

それを見た浅野薇々は、いっそ偽装を投げ捨て、相沢栞をベッドのヘッドボードへ力任せに突き飛ばした。

相沢栞の後頭部が角に激しく打ちつけられる。激痛に目の前が真っ暗になり、身体から力が抜け落ちた。

浅野薇々に躊躇いは微塵もなかった。

身をかがめて注射器を...

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