第55章

震える手を伸ばして根付を受け取ると、指先でその冷たい感触をなぞった。だが、そこからはかつてないほどの温もりが伝わってくる。

「時……」かすれた声には、泣きじゃくるような響きが混じっていた。

相沢時は彼女を見つめた。その瞳の奥にあった冷たさが溶け、代わりに複雑な感情が浮かび上がる。

彼は手を伸ばし、そっと姉の肩を叩いた。どこかぎこちないその仕草には、言葉にならない慰めが込められていた。

相沢栞はもう堪えきれなかった。相沢時の手をきつく握りしめ、顔を布団に埋める。押し殺したような嗚咽が喉の奥から漏れ出した。

二十数年の人生で初めて、肉親の前ですべての虚勢を捨て、苦しみを吐き出した瞬間だ...

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