第86章

再び苛立ちが胸に込み上げ、息が詰まりそうになる。

またこれだ。

またこの、死に損ないのような姿。

自傷や病を盾に気を引き、己の犠牲をひけらかす。

浅ましく、そして効果的だ。

彼が足を踏み入れると、革靴が床を叩き、硬質な音が響いた。

相沢栞はその音を聞きつけた。

力を振り絞って顔を上げる。痩せこけた頬を汗が伝い、視界はすでに霞んでいた。

逆光の中に立つ、輪郭のぼやけた影を見つめる。

「その見え透いた真似はやめろ」

その声は、彼女が横たわる床よりも冷たく、硬かった。

「手術は来週だ。それまで大人しくしていろ」

見下ろす眼差しに温度はない。

「二度と、そんな死にかけの無様...

ログインして続きを読む