第9章

「内服は胃の薬。こっちは内出血を散らす薬だ。時間どおりに飲んで」

彼は処方箋を木村さんに渡し、立ち上がって相沢栞に言った。

「ゆっくり休んで」

終始、相沢栞は一言も発さず、一度も顔を上げなかった。

温水景介が帰ったあと、木村さんは相沢栞を支えながら二階の主寝室へ連れて行った。

そこは彼女と神谷洲の婚室だった。

広く、塵一つないほど清潔に保たれている。だが、巨大な氷室のように冷え切っていた。

クローゼットには二年前の服が掛かったまま。お気に入りだったワンピースまで残っている。

相沢栞は一瞬、現実感が揺らいだ。

彼女は歩み寄り、ナイトテーブルの引き出しを開けた。

空だった。

...

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