第160章

エレノア視点

テントの中の空気は温かく、松の香りと、焚き火の煙が残した匂いで重たく満ちていた。星明かりは薄いナイロン越しにほとんど入り込めず、私たちは闇に近い繭の中にいる。そこでは触れることも、息づかいも、なにもかもが過剰なほど鮮やかに感じられた。外ではブルー・ヒルズ保護区が古い歌をささやいている――夜風に揺れる葉のかすかな擦れ、遠くで鳴くフクロウの声、見えない何かが踏んだ小枝が時折パキリと折れる音。そうした音が、私たちと世界の残りとを隔てる脆い壁を編み上げていく。まるでこの狭い空間だけが、時間そのものから削り出された聖域であるかのように。さっきのキスの余韻が、デレクの唇の感触となってまだ私...

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