第七十一章

デレク視点

エレノアはすぐさま身を引いた。涙に濡れた顔が、俺の反応を見てみるみる変わっていく。彼女の目が細まり、俺のシャツに広がった血の染みに焦点が合った。

「怪我してる」彼女は言い切った。まつ毛に涙がまだ絡みついているというのに、声色だけは急に実務的だった。

「たいしたことない」俺は突き放すように言った。

彼女は眉をつり上げた。その見慣れた仕草で、少しだけ彼女が彼女らしく見える。「肩はそう思ってないみたいね」

言い返す間もなく、彼女は救急箱を取りに動き出していた。一歩ごとに動きが目的を帯びていく。俺の手当てをすることが、彼女にとって具体的に集中できる何かになっているのだろう。自分の...

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