第6章

三日後。

東京病院の病室に、消毒液の匂いが微かに漂っていた。

早子がベッドの頭にもたれかかり、音楽雑誌をめくっていると、病室のドアが静かに開いた。

藤原修が立っていた。腕には白いカラーの花束を抱え、もう片方の手には洒落た紙袋を提げている。その顔には疲労と、どこか申し訳なさが滲んでいた。

「入ってもいいか?」修の声には探るような響きがあった。

早子は雑誌を置き、静かに頷く。修は病室に入ると、花をベッドサイドのテーブルに置き、紙袋から精巧な木製のオルゴールと小さなケーキの箱を取り出した。

「君が一番好きなモーツァルトのオルゴールと、アーモンドケーキだ」修は雰囲気を和らげ...

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