第9章

あの混沌に満ちた命名式から、三ヶ月の月日が流れた。

私はスターダスト邸のバルコニーに立ち、聖都の大地に降り注ぐ柔らかな朝の光を眺めていた。胸元で丸まっていたミルが、気だるそうに小さく欠伸をする。

「ご主人様、ローゼンベルク邸から知らせがありました。ヴィクトリア様が、またエドモンド様の元に戻られたそうです」

「それは彼女自身が選んだ道よ」

私は平静を保ったまま応じた。心は、不思議なほど凪いでいた。ヴィクトリアの選択は、とうに私の予測の範疇にあったからだ。彼女は勝利への執着を、決して手放すことなどできない。エドモンドの秘密を知ってなお、彼のもとへ戻り、破綻が運命づけられた関係を修復...

ログインして続きを読む