第4話 完璧な主婦であること

追い打ちをかけるように、もう一通。その短い一文に、私は全身の血が逆流するのを感じた。

『それから、我が家はカントリークラブの会員資格を解約することにしました』

どうして、心優が突然クラブを辞めるというの? あそこは、このT市で最も重要な人脈が交差する、社交界そのものなのに。

震える指で、近所で知り合いの弁護士三人に電話をかけてみた。しかし、それぞれが苦しい言い訳を並べては、丁重に断ってきた。A市で家事法を専門とし、大学時代はルームメイトだった美咲でさえ、電話口で急に「こういうのは、当人同士で話し合うのが一番よ」などと、信じがたい言葉を口にする始末だった。

大輔の影響力は、私が...

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