第5話 新たなスタート

学校での朝の送りは、いつもとは明らかに空気が違っていた。私と恵美、健太がトヨタから降り立つと、他の母親たちの視線が突き刺さるのを感じた。あからさまな同情、好奇の眼差し、そして、他人の不幸を蜜の味とする、隠しきれない愉悦の色。

あの日の出来事が、すでに噂として広まっているのは明らかだった。この閉鎖的なT市では、ゴシップは野火よりも速く燃え広がる。

恵美は車のドアを閉める前に一瞬ためらい、私の手をぎゅっと握った。

「ママ、今日すごく疲れてる顔してるよ」

「ちょっと寝不足なだけよ、恵美。学校、楽しんできてね」

健太はもうあの日の惨劇などすっかり忘れた様子で、校庭に向かって元気に駆...

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