第6話 金泥棒

彼が私を抱きしめようと腕を伸ばしてきたので、私はそれを受け入れた。肌に触れられると、ぞっとするような嫌悪感が全身を駆け巡ったけれど。彼の体は、もはや完全に異質なものに感じられた。まるで、たまたま同じベッドで眠っているだけの、見ず知らずの他人を抱きしめているかのようだった。

「俺はなんて馬鹿だったんだ」

彼は私の髪に顔をうずめて囁いた。

「仕事のプレッシャーや、パートナーへの昇進コースのストレス……。でも、そんなのは言い訳にならない。愛してるよ、美由紀。俺たちの家族を心から愛してる。小野七海とのことは——本当に、何の意味もないんだ」

つけているコロンが違う。若々しくて、安っぽい甘...

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