第6章

小島葵視点

「すっごく素敵な海辺の別荘を借りたの!」松本美咲が興奮して車から飛び出した。

私はスーツケースを引きずり出しながら、トランクから荷物を取り出す隼人先輩を見ないようにした。この週末旅行は、桜井直樹と松本美咲が企画してくれたもの――私たちの「恋のキューピッド役」へのお礼だという。隼人先輩も私も、友人たちの親切な申し出を断れるはずもなかったけれど、今となっては……。

私たちは同じ別荘に、二泊三日も閉じ込められることになったのだ。

ため息をつき、顔を上げた瞬間、隼人先輩と目が合ってしまった。彼はさっと視線をそらす。先週スターバックスで気まずい一件があってからというもの、彼の...

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