第131章

「知らないわ。ブランド名は聞いたことあるけど、謎めいていて取材も一切受けないそうね」

「そうか」

月城曜の声は平坦だった。彼は一枚のカフスボタンを彼女の目の前に差し出した。

「触ってみてくれ。その感触が、設計理念と一致しているかどうか」

姫野理緒は、彼の掌にあるカフスを見つめた。

照明の下、小さなダイヤモンドが凍てつく星のような冷たい光を放っている。

彼女はそっと指先で触れた。

「一致しています」彼女は言った。「紋様は、夜明け前にうごめく暗流のよう。そして中心のダイヤモンドは、闇を切り裂く最初の一筋の光……。デザイナーは抽象的な概念を、触れられる実体へと昇華させたのですね」

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