第139章

通話の向こうで、清掃員は口座に振り込まれた金額を凝視していた。そこには、年収に匹敵するほどの「小遣い」が、何の前触れもなく増えている。

躊躇いは一瞬にして、貪欲という名の怪物に飲み込まれた。

(たかが、ラベルを貼り替えるだけだ)

……

翌朝、姫野理緒は実験室に足を踏み入れた。

昨晩実施した治療器のアップグレードは成功を収めた。今日はその新たな伝導データに基づき、神経活性化に必要な培地の配合を微調整しなければならない。

彼女は薬品用冷蔵庫の前で足を止め、試薬の列から一本を取り出した。

「HEPES生物学的緩衝液」とラベルが貼られたガラス瓶に指先が触れた瞬間、眉がわずかに寄った。

...

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