第141章

姫野夏実が身を潜める古びたアパートの一室は、安っぽい香水と出前の残飯が混ざり合ったような、鼻をつく饐えた臭いが充満していた。

彼女は鼻をつまみながら、ノートパソコンの画面越しに、「国際的宝石鑑定士」という肩書きをぶら下げた外国人とビデオ通話をしていた。

「バトン先生、スイスの口座への送金は完了しました」

姫野夏実は声を潜めた。

「私が先生にお願いしたいのは、この鑑定報告書にサインをしていただくことだけです」

画面の向こうで、バトンという名の男はグラスを傾け、目を細めてメールに添付された「証拠」を品定めしていた。それは古色を帯びるよう精巧に加工された高模造の画稿と、厳格な文言で綴られ...

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