第16章

一方、月城曜は鈴木海斗の報告を聞きながら、滴り落ちそうなほど重苦しい空気を纏っていた。

「月城様、あの柚木志という男は、幼稚園に派遣されたばかりの用務員でした。昨日午後、着任早々に『自分には無理だ』と言って退職手続きを取り、携帯も解約済みです。口座を洗ったところ、退職の一時間前に四百万の入金がありました」

鈴木海斗は声を潜めて続けた。

「振込元の口座はペーパーカンパニーですが、資金の流れを辿ると、最終的に姫野グループの子会社に行き着きます」

証拠の連鎖はそこで途切れている。

姫野家側は手口が巧妙で、姫野夏実を直接指し示す証拠は残していない。

だが、それだけで十分だった。

月城曜...

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