第160章

姫野理緒は視線の端で鋭く捉えた。銀色のミニマルな仮面をつけた男が、その手稿を食い入るように見つめている。その瞳にあるのは、隠そうともしない貪欲さだ。

「開始価格は、五十万ユーロ」

「六十万」脂ぎった声が響く。

「七十万」

価格は天井知らずに跳ね上がっていく。

あの灰色のスーツの男は、札を上げようともしない。価格が百万を超えたあたりで、傍らの給仕に何かを耳打ちしただけだ。

「あれは『ナイト』の連絡係だ」月城曜の声が耳元で囁かれる。「奴らは代理人を立てて、自分は暗がりから買い手を品定めするのを好む」

価格が百八十万に達し、ハンマーが振り下ろされようとしたその時。

月城曜がようやく...

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