第164章

それはスイス製の最高級ブランドで、極めて精密な温度管理と多段階のグラインド機能で知られる名機だった。

記憶にあるのは一年前。あるデザイン誌のオンライン取材を受けた時のことだ。

「生活に不可欠ではないが、幸福感を劇的に高めてくれるもの」は何かという一問一答での質問に対し、彼女はこう答えていた。

当時、使い古したコーヒーメーカーの不調に悩まされていた彼女は、ついその型番を口にしただけだった。

それは何気ない冗談に過ぎず、彼女自身ですら忘れかけていたこと。

彼女は手を伸ばし、ひやりとした金属の感触を指先で確かめる。

ディスプレイが灯り、エスプレッソ、ラテ、カプチーノといったプリセットが...

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