第188章

七時十五分。視界に見慣れた人影が現れた。

彼は発つ時と同じダークスーツを身に纏っていたが、シャツの第一ボタンは外され、袖口も無造作に捲り上げられている。その姿からは、長旅の疲れが滲み出ていた。

数日にわたる時差ボケと、極限状態での攻防。

その代償として、眉間には隠しきれない疲労の色が刻まれている。

公聴会で見せた、あの冷徹で弁舌鋭い「商業の帝王」の面影はない。

そこにいるのは、ただ休息を求める一人の男だった。

姫野理緒の心臓が、トクリと音を立てた。

あからさまに疲弊した彼の姿を目にした瞬間、理性より先に身体が動き、思わず彼の方へ二歩踏み出していた。

だが、その二歩だけで、彼女...

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