第191章

「わかった」

彼はたった一言、そう告げた。

そして踵を返すと、一歩また一歩と病室を出ていく。

一度も、振り返ることはなかった。

背後で扉が閉まる際、微かな「カチリ」という音が響く。

姫野理緒はその場に立ち尽くし、誰もいなくなった入り口を見つめていた。冷徹な言葉で武装したはずの心臓が、空洞のような痛みを訴えている。

あの会話を最後に、月城曜が小児病棟に姿を現すことは二度となかった。

月城律が無事に退院すると、姫野理緒の生活は再び自宅と実験室を往復するだけの規則正しい軌道へと戻った。

彼女がマリー病院のVIP病棟に足を運ぶことはなく、月城曜の怪我の具合を尋ねることもなかった。

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